満州語(まんしゅうご)は満州族が話す言語。
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満州語の話者は満州族の間でも現在では極めて少なく、消滅の危機に瀕する言語の一つである[1]。
満州語は、言語学的にはツングース諸語に分類される膠着語である。アルタイ語族があるとすればツングース語派に分類されることになる。満州語の表記は、モンゴル文字を改良して作られた満州文字を使う。
なお、満州国では域内で使用される漢語(いわゆる中国語)を「満洲語」と呼称し、本項で述べる満州語を「固有満洲語」として区別した。
以下に満洲文語の音韻を概観する(ローマ字はメレンドルフ方式による満洲文字の翻字である)。必要に応じて国際音声記号による補足説明を加える。
母音
単母音には以下の6つがある。
a,e,i,o,u,ū
eは[e]ではなく[?]のような音、uは円唇[u]である。ūは通常g,k,hの直後にのみ現れ、[?]のような音であったと見られる。二重母音はai,ei,oi,ui,io,ooが認められる(ooはoの長母音とも解釈される)。男性(陽性)母音・女性(陰性)母音・中性母音による母音調和が存在するが厳格ではない。
男性母音 a,o,ū
女性母音 e
中性母音 i,u
子音
唇音 歯茎音 硬口蓋音 軟口蓋音
閉鎖音・破擦音 p,b t,d c,j k,g
鼻音 m n ng
摩擦音 f s š h
震え音 r
側面音 l
接近音(半母音) w y
p―bなど無声・有声の対立は、有気・無気(/p?/―/p/など)の対立だったという見方もある。
sは[s]であるがiの直前でのみ[?]であった。
c,jは硬口蓋破擦音[?,?]であった。
šは[?]であるがiの直前でのみ[?]であった。šiは固有の満洲語にはない。
k,g,hは男性母音a,o,ūの直前では軟口蓋音[k,?,x]、女性母音・中性母音e,u,iの直前では口蓋垂音[q,?,χ]であったと見られる。
ngはnとgの2音ではなく軟口蓋鼻音[ŋ]を表す。
音素配列上の特徴
音素の配列において以下のような特徴がある。
wの直後にはa,e以外の母音が来ない。
借用語を除いてt,dの直後にはiが来ない。
yの直後には母音iが来ない。
ūは通常k,g,hの直後にのみ来うる。
rは語頭に立たない。
ngは音節頭に立たない。また語中のngはk,gの直前にのみ現れる。
音節末に立ちうる子音はb,m,t,n,r,l,s,k,ngである。
語末に来うる子音はnのみである(ただし外来語はこの限りでない)。
通常、音節頭あるいは音節末に子音が連続しない(ただし、音節末子音と音節頭子音が連続することはありうる)。
文法
紫禁城・乾清門の扁額。左が中国語(ピンイン: qian qing men)、右が満洲語(ローマ字転写:kiyan cing men)満州語は類型論的に膠着語に分類され、語順は日本語と同じく「主語―補語―述語(SOV)」の順である。修飾語は被修飾語の前に置かれる。
si manju bithe tacimbi. (汝は満洲の書を学ぶ)
主語 修飾語 被修飾語
補 語 述語
また、関係代名詞がなく代わりに動詞が連体形を取って名詞を修飾するのも日本語と同様である。
soktoho niyalma (酔った人)
連体形 名詞
さらに、日本語同様、動詞を活用する(動詞語幹に接尾辞をつける)ことで、日本語で言う過去形や連用形と同じ働きを、動詞に持たせることができる。
例えば、動詞 genembi(行く) の語幹 gene に 過去を表わす hV をつけ gene-he とすると"行った"となる。 大抵の場合、"hV"で過去を表わせるが、例外もある。
tucimbi(出る),jalambi(止める),jombi(思い出す),sambi(知る),sembi(言う),ukambi(逃げる),sumbi(脱ぐ)等には-kVを付け、其々tucike,jalaka,jongko,sangka,sengke,ukaka,sungkeとするのが一般的である。
tere sargan hoton de gene-he (その娘は町へ行った)
tere sargan boo ci tuci-ke (その娘は家から出た)
tere sargan boo ci tuci-me, hoton de gene+he (その娘は家から出て,町へ行った)
tere sargan boo ci tuci-fi, hoton de gene+he(その娘は家から出た後,町へ行った)
tere sargan boo ci tuci-cibe, hoton de gene+he (あの娘は家から出たが,町へ行った)
体言の曲用は語幹の後ろに膠着的な語尾(助詞)が付くことによって表される。体言の格は主格(語尾なし)・属格(-i/-ni)・対格(-be)・与位格(-de)・具格(-i/-ni)・奪格(-ci)・沿格(-deri)がある。終格(-tala/-tele/-tolo)を認める場合もある。
人称代名詞には1人称単数 bi、1人称複数 be および muse、2人称単数 si、2人称複数 suwe、3人称単数 i、3人称複数 ce がある。1人称複数 be は聞き手を除外した形、muse は聞き手を含めた形である。
指示詞は近称と遠称の2系列からなる。ere(これ)― tere(それ)、uba(ここ)― tuba(そこ)、enteke(こんな)― tenteke(そんな)、uttu(このように)― tuttu(そのように)などがある。
疑問詞には we(誰)、ya(どれ、誰)、ai(何)、aiba(どこ)、antaka(どんな)、ainu(なぜ)、atanggi(いつ)、adarame(どのように)などがある。
満州語の形容詞は語形変化をしない不変化詞である。
動詞は終止形・連体形・副動詞形(接続形)がある。連体形は文末に来て終止形として用いられることが少なくない。
後置詞は、ある種の単語の後ろに来てさまざまな文法的意味を付け加える付属語である。大きく分けて、体言の格形の後ろに来て格関係を表すもの、用言の後ろに来て副動詞的に用いられるもの、文末についてさまざまなニュアンスを表すもの(日本語の終助詞に似る)がある。
語彙
語彙目録は「満州語の語彙集」を参照。
満洲語研究機関・研究家
黒龍江省満語研究所
中央民族大学中国少数民族語言文学学院少数民族語言文学系
愛新覚羅ウルヒチュン(日本名:吉本智慧子):満州語、女真語、女真文字、契丹語、契丹文字を研究。
日本大学文理学部史学科加藤研究室
^ 現在の中国で認定されている「満族」のうち、満州語を母語として話す(または話していた)ことが確認されているのは黒龍江省の農村部に分布するごく少数である。それ以外、特に都市部に居住する「満族」は中国語を母語としている。清朝は満州族に対し満州語の学習をたびたび奨励したが、書記言語は公用文として使用されたものの、音声言語の使用は次第にすたれた。最後の皇帝であった愛新覚羅溥儀は幼少時に伊克坦(イクタ)という教師から満州語を学んだがついに習得できなかった。